2012年9月7日

ドル円


現在のドル円の状況は、米国の不況、欧州の金融不安によって、円高状態が続いている。
日本円は基本的に円高基調になりやすい通貨なのだが、それを踏まえても急激な円高と言ってよい。
ドルやユーロでの円キャリートレードが見込めなくなったためと、米国が景気対策と称してドルの供給を増やし続けているため、投資家がドル安を見込んで日本円を買う動きがある事が一番の原因だろう。
中国元が開放されれば、投資家はそちらに向かい日本円は劇的に下がるのだろうが、中国は未だ発展途上国を気取り、自国通貨を統制している。

ドルもユーロも元も買えない。
だから、日本円が買われる。
この図式は未だ崩れていない。

さて、上記の背景を基本として、私が着目しているのが、実需による為替の動きである。
実需というのは、例えば、日本が自動車を売り、代金をドルで受け取る。
そのドルを日本円にして、国内の材料を買ったり、社員に給料を払ったりする。
ドルを円に変える時に、為替の動きが発生する。
つまり、ドルを売って、円を買う。
だから、貿易黒字国家であり、貿易額の大きい日本の円は、高くなり易いと考える訳だ。

私はこれまで実需によるこの動きは、投資的な為替の動きと比べて比較にならない程小さいため考えてこなかったのだが、最近事情が変わってきた。

まず、サブプライム・リーマンショック以降、金融投資自体が萎縮傾向にあり、取引高が減っているため、相対的に実需の動きが為替に及ぼす影響が大きくなっているという事がある。
もう一つは、原子力発電所が機能しなくなった事で火力発電所の材料費が嵩み、日本の貿易収支がマイナスになり、「そこに目を付けた投資家達が、貿易収支の発表に合わせて円を売り買いし始めた」という事だ。

私が大きいと感じているのは後の方である。
以前は貿易収支発表時など、相場に何の影響も与えなかったのだが、現在は発表前後に大きな動きが起こる事が多い。
恐らくヘッジ系がクロス円取引の指標に貿易収支を新しく含めたという事だろう。
それにつられて、一般参加者達も貿易収支を重視しつつある。

貿易収支がマイナスになったという事は、今まで実需でじりじりと円高が進んできた大きな流れ・長期的な流れが、じりじりと円安になる流れに変わったと言う事だ。
例えばここに載っている様に、実需と言うのは反対売買が無いので恒久的に一方向へポジションが溜まっていく。
逆に投資・投機であれば、売り買いでポジションを持った後、利益が確定したところで反対売買し、ポジションを手仕舞いする。
つまり、長期的には為替の動きはプラマイ0になる。

上で述べたように実需の為替取引の額は微々たる物だ。
だが、最近のクロス円は、どう考えても貿易収支の指標に連動した動きになっている。
2月に一気に10円近く円安となったのも、数十年振りに日本が貿易赤字となったニュースが始まりであったし、ここ数日の円安基調も、大きな貿易赤字の指標が発表されてからとなっている。
つまり、実際の実需の取引額は小さいものの、「それにつられて動く投資家の取引額」は非常に大きい物になるのだ。

これがここ数日、そしてこれからのドル円の動きを読む上で大きなポイントとなる。
アメリカの失業率と景気動向、欧州の金融不安、そして日本の貿易収支が、現在クロス円の為替を動かしている3本柱である。

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